雨垂雑記

百合好きの備忘録

名曲紀行 vol.23 パルムグレン《3つの小品》より〈粉雪〉/《3つの夜想的情景》より〈星はきらめく〉/《3つのピアノ曲》より〈雨だれ〉

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セリム・パルムグレン(1878~1951)

おはようございます、Raindropです。

 

本日も名曲紀行のお時間です。

 

今朝は、フィンランドパルムグレン作曲《3つの小品》より〈粉雪〉、《3つの夜想的情景》より〈星はきらめく〉、そして《3つのピアノ曲》より〈雨だれ〉をお届けします。

 

今日は東京で雪が降ったりするらしいので、ふと思い立ってパルムグレンを選んでみました。

けれど、一日でも早く、皆様に彼の繊細なピアノ曲をたくさん味わっていただきたい。ということで、ちょっと欲張って三曲いっきにご紹介します。

 

ちなみに、彼がつくった小品集のうち、《3つの○○》となっているものが4つあります。なので、曲を探す時も一苦労なのですが(笑)、やはり3という数字は何か特別なものがあるのかもしれませんね。

 

さて、パルムグレンという名前をご存じの方は、そうたくさんはいらっしゃらないのが現状ではないでしょうか。本当はもっと有名になってほしいんですけどね……

 

フィンランド南西部、西海岸の町・ポリに生まれた彼は、ブゾーニに師事したピアニスト。少年時代から作曲を始めるなど早熟な音楽家でした。そして、時代の子というか、アカデミックで近代的な性格を色濃く持っています。

 

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フェルッチョ・ブゾーニ(1886~1924)。バッハ《シャコンヌ》の編曲などで有名。

 

北欧のショパン」「北欧のシューマンの異名をとり、詩的な旋律が北欧らしい透き通ったかわいらしさ、涼しさを湛えた、童話のような曲をたくさん作った人です。

 

以前ご紹介したリトアニアのチュルリョーニスと同様、祖国ではなかなかの有名人。彼が生まれたポリには、その業績を記念して、1931年にパルムグレン音楽学が建てられました。

 

1.《3つの小品》より〈粉雪〉

そんな彼の〈粉雪〉は、一度聴いていただければすぐわかりますが、なんとまあ繊細な曲でしょうか。暗い夜の中、白い粉雪がぱらぱらと舞う情景がふっと浮かんできます。まるで絵のような曲なんです。

 

この曲、ただの雪じゃなくて「粉雪」ってなってるのがものすごくよくないですか?

 

冬の夜道、粉雪が舞うくらい冷え込む空気。静かに更けゆく夜を通して、お砂糖のように降り続けます。フィンランドの細やかな抒情に浸ってください。

 

演奏は、史上もっともパルムグレンを細やかに演奏したピアニスト、館野泉さん。

 

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2.《3つの夜想的情景》より〈星はきらめく〉

これも、とっても童話的な小品。

聴いていただければ、なるほど、と思うことでしょうが、夜空をふと見上げた時に遠くにきらめく星の瞬きが描かれた、静かな曲です。

これから夏、山に登ったりなどすると、本当に空が澄んで、数えきれないほどの星が見えますよね。ああいった、音のない夜空の星々のさやけさに思いを馳せて聞いていただければと思います。

 

どこかクリスマスの讃美歌のような情感も秘めた素敵な小品。さほど難しくはありませんから、皆さんも弾いてみてはいかがでしょう?

 

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3.《3つのピアノ曲》より〈雨だれ〉

今日の最後を飾るのは、しとやかな「雨」の情景。

透き通った高音をメインに、ほの暗い雨雲から、雨粒がひとつ、またひとつと落ちてきます。フィンランドの雨はどんな雨なのか、浅学につき知らないのですが、窓辺にしつらえた安楽椅子か何かに腰を沈めて、いつやむとも知れない冷たい雨が庭の草木を濡らすのをぼんやりと眺める。そんな情景が浮かんできます。

 

この調子では買い物も行けない。けれど、植物が育つには雨が必要ですし、人間が暮らしてゆくにも雨は必要です。そんな恵の雨が、静謐な空気の中で浮かび上がって見えるかもしれません。

 

あなたにとっての雨は、どんな雨でしょう?

 

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この機会に、パルムグレンというフィンランドの隠れた巨匠の音楽を、ぜひ味わっていただければと思います。