雨垂雑記

百合好きの備忘録

名曲紀行 vol.20 ブルグミュラー《18の性格的な練習曲》

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ヨハン・フリードリヒ・フランツ・ブルクミュラー(1806~1874)

 

おはようございます。Raindropです。

 

本日も名曲紀行のお時間です。

 

今朝は、ドイツブルグミュラー作曲《18の性格的な練習曲》より14~18番です。

 

あれ、ブルグミュラーかよ、と思った方もいらっしゃるかもしれません。

 

ピアノを習ったことのある多くの人は、《25の練習曲》を始めのころにやって、それきりだからです。アラベスクとか、貴婦人の乗馬とか。それも素敵でしょう。けれど、どこかでもうとっくに過ぎ去った単なる練習曲、と思っていないでしょうか。

 

しかし、ブルグミュラーを侮るなかれ。今回ご紹介する《18の練習曲》は、それほど有名にはなりませんでしたが、より一層の音楽性を要求される曲集ですし、内容も《25の練習曲》と遜色ないくらい、事によってはそれ以上に充実しています。

 

 

さて、とはいえ、まずは教育者としてのブルグミュラーに触れておかなければならないでしょう。

 

ドイツのレーゲンスブルクに生まれた彼は、生涯でピアノ学習用の教本を合計三冊作っています。

おなじみ《25の練習曲》(Op.100)、《12の旋律的で華麗なる練習曲》(Op.105)、そして今回取り上げる《18の性格的な練習曲》(Op.109)です。

 

練習曲というと、なんだか機械的でつまらない印象があるかもしれません。

 

例えば——これを例に出すと怒られてしまうかもしれませんが——ツェルニーの《30番練習曲》などは、あまり面白いとは言えないのではないか。

あとは、サティが揶揄した(これもそのうちご紹介できれば……)クレメンティとか。

 

面白い音楽とは何か、という問題はありますが、聴いて楽しく、弾いて楽しいものを仮に「面白い音楽」だとすると、ツェルニークレメンティの練習曲は、さほど面白くない……というのが、個人的な感想です。

 

あ、もちろん、リストショパンの《練習曲》は別ですよ?

 

そこへ来ると、ブルグミュラーは別格です。

 

まずタイトルが、弾く人の興味をそそります。ピアノは何歳から始めてもよいものですが、練習に飽きやすい子供たちでも、色とりどりの情景が浮かぶような、楽しいタイトルがつけられた曲というので、まず素晴らしい。(ただ、このうち《12の旋律的で華麗なる練習曲》には曲ごとに絵画的なタイトルはつけられていませんが、それを補って余りある内容を持っています)

 

それだけでなく、彼が作曲した三つの練習曲集は、内容的にもとても充実しているのです。

 

要するに、単に技術があるだけでは、きちんとした曲にならないのがミソ。

 

舟歌(25の練習曲)、〈ゴンドリエの歌〉(18の性格的な練習曲)の二つは、音楽の一様式「舟歌」ですが、ヴェニスのゴンドリエの情景、水の音や色舟が渡ってゆく川の空気感など、曲にまつわるいろいろな要素をじゅうぶんに想像して、表現するのが大切になってきます。

特によく言われる「歌う」ことができないと、つまらない曲になってしまうのが怖いところです。

 

そんなブルグミュラーの一筋縄ではいかぬ《練習曲》。

 

聴いたことがない方も、遠い昔に練習したまま、楽譜が本棚の奥に眠っている方も、この機会にと思って聴いてみましょう!

 

なんなら、弾きなおしてみると、思わぬ発見があると思いますよ。

 

本日お聴きいただくのは、記事のタイトル通り《18の性格的な練習曲》から、14番〈ゴンドリエの歌〉、15番シルフィード(風の精)〉、16番〈別れ〉、17番〈行進曲〉、18番〈紡ぎ歌〉。五曲続けてお届けします。

 

特に14番は、ヴェニスの船頭さんがリフレインを口ずさみながら通り過ぎ、澪を引いて霞む運河のはるか向こうへ遠ざかってゆく、そんな情景の浮かぶ曲で、ぼくの一番のお気に入りです。

 

演奏は、私がブルグミュラーを再発見するきっかけとなった、永井充さん。

日本で一番ブルグミュラーを色彩豊かに歌われる方だと思います。

 

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