雨垂雑記

百合好きの備忘録

名曲紀行 vol.22 セヴラック《ラングドックにて》より〈農家の市の日〉

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デオダ・ド・セヴラック(1872~1921)

おはようございます。Raindropです。

 

本日も名曲紀行のお時間です。

 

今朝は、フランスセヴラック作曲《ラングドックにて》より〈農家の市の日〉をお届けします。

 

いやぁ、ついに来ました。セヴラック。

といっても、日本ではまだまだ有名な作曲家とはいえない知名度ですが、もうこの日が来るのを心待ちにしていました。それくらい大好きな作曲家です。

 

フランスといっても、先日紹介したフォーレや、皆さんご存じのドビュッシーなどとは対照的な「田舎の」作曲家です。

というのは、彼が南フランスの郊外に生まれ、パリのスコラ・カントルムで学んだのですが、パリの空気がどうしても肌に合わず、故郷に戻ったのです。

 

ただ、パリではヴァンサン・ダンディブランシュ・セルヴァといった貴重な出会いを得て、その後の作曲に大きな影響を受けていることからも、彼のパリ時代は大切なものでもあったことがわかります。

 

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ヴァンサン・ダンディ。スコラ・カントルムの創設者。

 

しかも、彼自身「田舎の作曲家デオダ・ド=セヴラック」と署名したほど、故郷の風土に誇りを持っていたのです。

そんな素朴で魅力的な音楽を、ドビュッシー「彼の音楽はとても良い香りがする。土の薫りがする素敵な音楽だ」と評したほどです。

 

今夜の一曲〈農家の市の日〉も、そんなセヴラックの魅力の詰まった曲です。

《ラングドックにて》の最後を飾る曲で、にぎやかな定期市の日の村の光景が鮮やかに描き出されます。

パリで輝かしい成功を収めたにも関わらず、都会の気取った空気に背を向け、農夫たちと土にまみれながら楽しく暮らすことを選んだ彼の心が映す、村の情景。曲の終わりで鳴るのは、夕暮れを告げるアンジェラスの鐘

 

西洋の人にとって、教会の鐘の音というのは、中世から続く大切な暮らしの一部。鐘を聴いた農民たちは、敬虔な気持ちにもなったでしょうし、「さあ、今日の仕事は終わりだ!」と解放感も味わったことでしょう。

 

セヴラックの家は、とても敬虔なカトリックの家だったそうです。

 

やさしい夕暮れの風の中に、穏やかな土の匂いに、南フランスの夕暮れを感じてください。我々が忘れてしまった大切なものを、彼の音楽は教えてくれます。

 

演奏は、アルド・チッコリーニ

 

www.youtube.com

 

参考文献

①『セヴラックピアノ作品集3』館野泉・久保田春代編、音楽之友社、2004

②「ピアニスト 深尾由美子オフィシャルサイト」より「ラングドック地方で」(

http://www.severac-note.com/enlanguedoc.html,2022/03/21閲覧)