雨垂雑記

百合好きの備忘録

名曲紀行 vol.27 マクダウェル《森のスケッチ》

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エドワード・マクダウェル(1860~1908)

 

こんばんは。Raindropです。

本日も名曲紀行のお時間です。

 

今夜は、アメリマクダウェル作曲《森のスケッチ》をお届けします。

 

マクダウェルって誰?という方が多いでしょうから、ざっと彼の生涯を振り返ってみましょう。

 

マクダウェルドビュッシーの一つ年上という世代で、実はパリ音楽院では先輩と後輩の関係でした。そんな彼は3年ほどパリにいた後ドイツへ行き、作曲家兼ピアニストのヨアヒム・ラフに師事します。

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ヨアヒム・ラフ(1822~1882)

さらに《ラ・カンパネラ》で知られるフランツ・リストとも親交を持ち、リストに目を懸けられたことでドイツでコンポーザーピアニストとして活躍しました。

 

ラフはリストの助手でしたから、マクダウェルにとっては師弟関係が思わぬ縁を運んでくれた、といえるかもしれません。

 

さて、こうしてヨーロッパ時代が長かったマクダウェルですが、27歳でアメリに帰国、音楽の教授として活躍しますが、41歳の時、交通事故により脳障害を起こしてしまいます。そうして精神異常にも悩まされることになり、46歳の若さで世を去りました

 

そんな彼の《森のスケッチ》。ヨーロッパ時代が長かったにも関わらず、インディアン黒人の音楽もどん欲に吸収し、極めてアメリカ的な音楽を次々と作曲、アメリカ音楽の発展に尽力したマクダウェルらしい小品集です。

この曲集も、森に魅せられた印象が、やさしく光を放つような珠玉のピースにまとめられています。

 

音楽の舞台はアメリカ東部。ニューハンプシャー州はピーターボロ、森と水辺が美しい、牧歌的な一面も持った素敵な町です。

せっかくですから、↓のホームページで写真を見てみましょう!

きっと訪れたくなりますよ~(今は時節柄、そうもいきませんが……^^;)

 

www.tripadvisor.jp

 

さて、この《森のスケッチ》、全曲を通してひとつのストーリーのように仕立てられており、

1.〈のばらに寄す

2.〈鬼火

3.〈懐かしき思い出の場所で

4.〈秋に

5.〈インディアンの小屋から

6.〈睡蓮に寄す

7.〈リーマスおじさんから

8.〈荒れ果てた農園

9.〈牧場の小川で

10.〈夕べの語らい

 

と、秋の散歩道を思わせる構成。いずれも耳に心地よく、穏やかな気持ちにさせてくれる音楽たち。特に6.〈睡蓮の花に寄す〉は絶美です。

 

詩的で文学的な曲のタイトルは、リストやラフの影響によるのだそう。

 

二つだけ補足をすると、「リーマスおじさん」というのは、当時アメリカの子供たちの間で広く読まれていた黒人民話集マクダウェル自身も愛読したといいます。

そして、注目していただきたいのが終曲〈夕べの語らい〉。これは一日の思い出話のような曲で、曲集を通して聴いていただくと、ハッとする箇所がいくつかでてきます。お試しあれ。

 

www.youtube.com

 

参考文献:門馬直美「この曲集について」『マクダウェル 森のスケッチ』全音楽譜出版社、2021、p.2~3