名曲紀行 vol.27 マクダウェル《森のスケッチ》
こんばんは。Raindropです。
本日も名曲紀行のお時間です。
今夜は、アメリカ。マクダウェル作曲《森のスケッチ》をお届けします。
マクダウェルって誰?という方が多いでしょうから、ざっと彼の生涯を振り返ってみましょう。
マクダウェルはドビュッシーの一つ年上という世代で、実はパリ音楽院では先輩と後輩の関係でした。そんな彼は3年ほどパリにいた後ドイツへ行き、作曲家兼ピアニストのヨアヒム・ラフに師事します。
さらに《ラ・カンパネラ》で知られるフランツ・リストとも親交を持ち、リストに目を懸けられたことでドイツでコンポーザーピアニストとして活躍しました。
ラフはリストの助手でしたから、マクダウェルにとっては師弟関係が思わぬ縁を運んでくれた、といえるかもしれません。
さて、こうしてヨーロッパ時代が長かったマクダウェルですが、27歳でアメリカに帰国、音楽の教授として活躍しますが、41歳の時、交通事故により脳障害を起こしてしまいます。そうして精神異常にも悩まされることになり、46歳の若さで世を去りました。
そんな彼の《森のスケッチ》。ヨーロッパ時代が長かったにも関わらず、インディアンや黒人の音楽もどん欲に吸収し、極めてアメリカ的な音楽を次々と作曲、アメリカ音楽の発展に尽力したマクダウェルらしい小品集です。
この曲集も、森に魅せられた印象が、やさしく光を放つような珠玉のピースにまとめられています。
音楽の舞台はアメリカ東部。ニューハンプシャー州はピーターボロ、森と水辺が美しい、牧歌的な一面も持った素敵な町です。
せっかくですから、↓のホームページで写真を見てみましょう!
きっと訪れたくなりますよ~(今は時節柄、そうもいきませんが……^^;)
さて、この《森のスケッチ》、全曲を通してひとつのストーリーのように仕立てられており、
1.〈のばらに寄す〉
2.〈鬼火〉
3.〈懐かしき思い出の場所で〉
4.〈秋に〉
5.〈インディアンの小屋から〉
6.〈睡蓮に寄す〉
7.〈リーマスおじさんから〉
8.〈荒れ果てた農園〉
9.〈牧場の小川で〉
10.〈夕べの語らい〉
と、秋の散歩道を思わせる構成。いずれも耳に心地よく、穏やかな気持ちにさせてくれる音楽たち。特に6.〈睡蓮の花に寄す〉は絶美です。
詩的で文学的な曲のタイトルは、リストやラフの影響によるのだそう。
二つだけ補足をすると、「リーマスおじさん」というのは、当時アメリカの子供たちの間で広く読まれていた黒人民話集。マクダウェル自身も愛読したといいます。
そして、注目していただきたいのが終曲〈夕べの語らい〉。これは一日の思い出話のような曲で、曲集を通して聴いていただくと、ハッとする箇所がいくつかでてきます。お試しあれ。