名曲紀行 vol.26 A.ワイセンベルク《シャルル・トレネによる6つの歌の編曲》より〈パリの四月〉
こんばんは。Raindropです。本日も名曲紀行のお時間です。
今夜は、ブルガリア。A.ワイセンベルク作曲《シャルル・トレネによる6つの歌の編曲》より〈パリの四月〉をお届けします。
ついに四月がはじまりましたね。
人間にとっては、多かれ少なかれ新しい環境に投げ込まれ、期待と不安の入り混じる季節。街にとっては華やぐ季節だと思います。そして、街路樹や花壇の花々、山辺の草花といった自然にとっては、生命が芽吹く季節です。
そんな四月のはじまりを飾るにふさわしい一曲をご紹介。
ワイセンベルクはピアニストとしての方が有名でしょう。
前回ラフマニノフの《ピアノ協奏曲 第2番》を扱ったときのソリストでしたね。ブルガリアはソフィアに生まれ、ジュリアード音楽院で学んだ巨匠です。
彼はピアニストとしては、作曲家の音を復元することに心血を注いだ人で、時には冷徹と評されもしますが、『音の彫刻家』の異名通り、作曲家の、そしてその曲の真の姿をまざまざと蘇らせる演奏で聴衆を魅了する天才です。彼の指から紡ぎだされる音は、まるでクリスタルのようで、水しぶきや光の粒のような音色は、一度聴けば魅了されること間違いなし。
そんなワイセンベルクの編曲した今日の一曲も、彼の個性が存分に発揮された名曲といえましょう。和音の重厚さ、自然で、かつ驚異的なテクニック。ふとした瞬間に見せる甘い横顔。そして何より、光の粒が水面に跳ねるような、瑞々しい音楽の雨。
いろいろ言葉を並べてみましたが、とにかく瀟洒の一言、洒脱の一言に尽きます。
……あれ?二言?
閑話休題、パリの春は、東京より少し寒く、日本で言えば東北地方の感覚なのだそう。
けれど、華やかで、何気ない茶目っ気が垣間見える街角。八重桜も咲いて、とっても美しいようです。
未だ見ぬ花の都の春を描き出す、今日の一曲。
私にとっても、人生で最も大切な曲のひとつです。
最後に、元となったトレネの歌を紹介してくださっているページのリンクを貼っておきます。曲がより一層魅力的に聴こえてきますので、ぜひご覧ください。
演奏は、今回は二つご紹介。
ひとつは作曲者自身の演奏。もっとも伝えたかったニュアンスが伝わりますが、年代の影響でノイズがちょっと……という感じ。でも、とにかく貴重な音源ですし、とっても素敵なことは間違いありません。
二つ目は、超絶技巧のピアニストとして知られ、ワイセンベルクに通じるような光の音を響かせる、マルカンドレ・アムラン。