雨垂雑記

百合好きの備忘録

名曲紀行 vol.24 ブリッジ《おとぎ話組曲》

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フランク・ブリッジ(1879~1941)

こんばんは。本日も名曲紀行のお時間です。

 

今夜は、イギリスブリッジ作曲《おとぎ話組曲》です。

 

ブリッジは、ブライトン出身。

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ブライトン地図(*1より)

ロイヤルカレッジに学び、ブリテンのお師匠さんとして知られています。前衛的な作風とされますが、かなり親しみやすい作風なのではないかと勝手に思っています。

 

けれど、ブリッジがいわゆる「イギリス的」な作曲家だったか、と言われれば、お世辞にもスタンダードとはいえないのです。

 

基本的にイギリスの作曲家は民謡に取材することが多いのですが、ブリッジに限っては民謡にほとんど見向きもしませんでした。彼はむしろ、当時ヨーロッパの大陸の方で流行っていた前衛主義に近いとされています。

 

ちなみに、当然彼も初めから順風満帆だったということはなく、作曲に専念できるようになったのは、クーリッジ夫人の援助が決まってからのこと。それまではヨアヒム四重奏団やイギリス弦楽四重奏団などでのヴィオラ奏者を務めたり、サヴォイ劇場、ロンドン交響楽団などで客員指揮者を務めたりもしていました。

 

ここまで彼のことを「前衛主義」として紹介してきましたが、今回ご紹介する《おとぎ話組曲はとってもメルヘンチックで親しみやすい、優しい曲集です(「易しい」ではないですよ!)。

 

全四曲からなる組曲で、1917年の作曲。この年はもちろん第一次世界大戦の真っただ中。安らげる日がなかなか訪れない中、メルヘンの世界に逃避したのがこの曲集だそうです。

 

なんだか、今の世界情勢にも通じてしまうものがありますね……

一日も早く、戦場に平和が訪れますように。

 

聴いてみればわかりますが、どこか懐かしさも漂う、とってもかわいらしい曲たち。日常、ふと辛くなってしまったときに安らぎを求めて帰っていけるような、英国メルヘンのアルバムといえるでしょう。

 

「お姫様」「鬼」「魔法」「王子様」とそれぞれ題名がついていますが、なんとまあ童話的なタイトル、そして曲調でしょうか。ぼくの一押しは「お姫様」。とても可憐でかわいらしく、一度聴いたら魅了されること請け合いです。お城の中で、小鳥と遊んだり絵本を読んだり、まさしく「童話的」な風景が浮かんできます。途中から挟まるワルツも洒脱でとても素敵。

 

それにしても、やっぱりこういうファンタジー的な要素はイギリスが一番美しい気がします。カズオ・イシグロ忘れられた巨人など、個人的には英国ファンタジーの面目躍如だと思っています(ただし、作者自身は「これはただのファンタジーではない」とコメントしていますが……)。

 

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カズオ・イシグロ

 

皆さんは、どのお話がお気に入りですか?

 

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