名曲紀行 vol.16 ナザレー《オデオン》《ペリゴーソ》
こんばんは。Raindropです。
本日も名曲紀行のお時間です。
今夜は、ブラジル。ナザレー作曲《オデオン》《ペリゴーソ》の二本立てでお届けします!
前回からすれば一気に南に飛ぶことになりますね。南米といえばピアソラの出身地・アルゼンチンの方が音楽的には有名でしょうか。あのアルゲリッチやバレンボイムも輩出していますし。けれど、ブラジルにも偉大な作曲家がいるのです。
よくご存じの人は、ヴィラ=ロボスを思い浮かべたかもしれません。
ブラジル風バッハなどで有名ですね。しかしその先輩が、“ブラジルのショパン”と称されるナザレーでした。
彼が愛したブラジルの、民俗音楽に根差した素朴な曲をたくさん作ったナザレー。
音楽は気軽に楽しまれるべきだ、という哲学を持っていた彼は、ブラジルのポピュラー音楽ショーロに特に親しみ、今に続く発展の基礎を築いた人物としても知られています。
彼は、その異名に偽りなく、幼少期からショパンの曲によく親しみました。そのため、作風にはショパンの影響もかなりあったようです。それから、このコーナーで以前ご紹介した、あのゴットシャルクにも大きな影響を受けたらしい。
ゴットシャルクは、リオデジャネイロでのデビューによって、ブラジル楽壇に一旋風を巻き起こします。その風をもっとも近くで受けたのがナザレーだったのです。
敬愛するショパンをなぞるように、コンポーザーピアニストとして活躍したナザレ―は、47歳の時から当時の知識人が集まるシネマ《オデオン》のロビーで演奏活動を始めます。
そう、今日の《オデオン》は、この映画館の名前だったのです。
オデオンではのちにヴィラ=ロボスもチェロ弾きとして活躍し、ふたりは共に演奏をして大いに人気を博しました。のちにヴィラ=ロボスはナザレ―のことを「ブラジルの魂を真に具現化する音楽家」と絶賛しています。
そんなナザレ―の《オデオン》。きっと楽しい気分になれるでしょうし、どこか映画館につきものの哀愁も感じられるかもしれません。
さて、もう一曲は《ペリゴーソ》。
ペリゴーソとは「危険人物」の意。けれど、根っからの危ない人、というよりは、ちょっとおどけた感じの危険な人という雰囲気があります。
ナザレーがこの曲に込めた厳密な意味はよくわかっていないのですが、彼は身の回りの様々なものからタイトルを付けたことで知られ(オデオンもそうですね)、いわば生活派ともいえる人でしたから、ペリゴーソもまた、誰か身近な人物、親しみのある光景を自然に思い起こしてつけられたタイトルなのでしょう。
なかなか馴染みのないブラジル音楽かもしれませんが、この機会にいろいろ楽しんでみてくださいね。