雨垂雑記

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名曲紀行 vol.18 ディーリアス《春初めてのカッコウを聴いて》

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フレデリック・ディーリアス(1862~1934)

 

こんにちは。Raindropです。

 

さて、今日も昨日に引き続き名曲紀行のお時間です。

 

本日は、イギリスディーリアス作曲《春初めてのカッコウを聴いて》をお届けします。

 

もうだんだん春がやってきましたね。そんな季節にぴったりの曲です。

 

ディーリアスはイギリスの作曲家。今年で生誕160年を迎えました。

 

とはいえ、生涯の大部分過ごしたのはフランス。しかも、両親がドイツ人という、なかなか色々な国のエッセンスを併せ持つ作曲家です。

 

音楽にも絵画と同じく「印象派」と呼ばれる(あるいは自称する)人々がいました。発祥はもちろんフランスで、ドビュッシーラヴェルに始まったとされますが、基本的には絵画で興った印象派の運動に触発された形です。

 

ディーリアスは別に印象派を自称していたわけではないのですが、曲の鑑賞や分析のうえでは印象派的な” 作曲家と言われます。

 

この「印象派」という言葉に囚われすぎるのもよくないのですが、まぁ彩色やイメージ(フランス風に言えばイマージュ)を大切にしたのは共通していますから、とりあえずよいのではないでしょうか。

 

先ほど、ディーリアスが過ごしたのはほとんどフランス、というお話をしましたが、22歳まではイギリスにいました。なので、作曲の上でも、幼少期から青年期までを過ごしたイギリスの自然や街並みの美しさは、しっかりと曲に息づいているといえるでしょう。たとえ、ディーリアスがそれを意識していなかったとしても。

 

この曲は《小オーケストラのための二つの小品》の二曲目。いわゆる ”音詩” に分類されます。交響詩のちっちゃい版と思っていただければよいと思います。

 

曲を通してクラリネットカッコウの声が表現され、暖かく美しい春の訪れを告げるのです。

 

第二主題にはノルウェー民謡「オーラの谷にて」が用いられていますが、これはディーリアスが親交を結んでいたグリーグの影響によるもの。この民謡はグリーグ自身、《伝承による伝承によるノルウェー民謡》というピアノ曲集の中の一曲に、そのままのタイトルで用いています。

 

ただ、そこまで背景知識を意識しなくとも、この曲に香る旋律の清純さ、穏やかな春の色どりは、誰であっても素直に感じることができるでしょう。

 

冒頭の絶妙な和音は、ディーリアス・マジックとも呼ばれるそうですよ。

 

カッコウの声を映した旋律が何度も繊細に形を変えながら現れるその音楽は、カッコウの声だけでなく、イギリスの春の息吹を運んでくれます。

 

演奏は、ビーチャム指揮、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

 

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