名曲紀行 vol.12 イベール作曲《寄港地》
こんばんは。Raindropです。
本日も名曲紀行のお時間です。
ぼちぼち夜更新になりそうな今日この頃。
今夜は、イタリアからアフリカを経て、スペイン。といっても、作曲家はフランス人です。
イベール作曲《寄港地》をお届けします。
ジャック・フランソワ・アントワーヌ・イベール。1890年にパリで生まれ、同じ地で1962年に没した、生粋のパリジャンでした。1962年というと、案外最近ですね(?)
イベールは、第一次世界大戦中、海軍士官として従軍していました。その時に地中海を巡った印象を、戦後落ち着いてから曲に仕立てたのがこの《寄港地》です。ぜんぶで三曲の組曲になっています。
第一曲〈ローマ~パレルモ〉では、イタリアの首都を出発し、海を渡ってシチリア島へ。
このパレルモは、地中海文明の十字路と呼ばれます。ギリシア、フェニキア、ローマ、ビザンツなど様々な文化が綾なす地で、アラブ系の建築物も残され、次のアフリカ大陸へと航路をいざないます。
ここで、イベールはフルートを使って、船が進む海を表現しました。
途中からトランペットの音に導かれて始まるのは、ナポリの舞曲タランテラ。ゴットシャルク《大タランテラ》の時にお話ししましたね。
そして、どこかディズニー映画を思わせる、シチリアの不思議な情景もしっかりと描かれます。イタリアではありますが、ヨーロッパ大陸のいわば「陸の国」とは一線を画すのがシチリア島なのですね。
第二曲〈チュニス~ネフタ〉では、アラビア風の、砂漠や隊商、市場の情景が浮かんできます。
特徴的なメロディーは、オーボエだそうです。このオーボエの音色が、北アフリカの異国情緒にぴったりとあって、ほんとうにアフリカにいるよう。チュニジアの首都にして港町のチュニスから、内陸部のネフタに向かいます。
世界遺産にもなっているチュニスの旧市街はアラブとフランスの交差点とも呼ばれる街です。なんだか、シチリア島に通じるものがありますね。
そして、そこから南へ向かって奥へ入ってゆくと、アルジェリア国境近くのネフタへ。このネフタはジェリド湖という湖の北にあり、いわばリゾート地。チュニジアの初代大統領ハビブ=ブルギバが毎年休暇で訪れていました。ナツメヤシの茂る「花籠」というオアシスがあるのだとか。なんだか行ってみたくなりません?
第三曲〈バレンシア〉では、スペインに向かいます。
セギディーリャというスペインの舞曲で、ファンファーレを挟みつつ、熱気に満ちた港町の情景を歌い上げます。メロディーラインももちろん素敵ですが、打楽器がいい味出してますよね。前の二曲と比べても、かなり打楽器が前面に出てきているような気がします。
陸にあがって地域を眺めつつ、やはりそこは海軍士官。どこか船や海の情景が離れないようにも思えますね。
バレンシアといえば、そろそろサン・ホセの火祭りの時期ですね~!
セビリアの春祭り、パンプローナのサン・フェルミン祭と合わせてスペインの三大祭りと呼ばれています。
曲の一番最後、笛の速い伴奏が追い立てるように他の楽器を駆り立てていくのがなんとも心地よい。
こんな風に、ヨーロッパの中心からは離れた、異国情緒漂う街々を巡ってきましたが、どこに行ってもイベールはパリジャンの洗練された気風を忘れません。パリっ子海軍士官の面目躍如、といったところでしょうか。
お借りした写真の掲載元(いずれも2022/03/06閲覧)
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